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自分の思いを表せる言葉こそ正しい『日本語はこわくない』書評

言葉の誤用か、移り変わりか

突然ですが、クイズ番組などで「この言葉は多くの人が誤った意味で使っている」というような解説を聞くたび、腑に落ちないでいました。世の中の大勢が、従来とは異なる意味で使っているのならば、時代と共に言葉が移り変わっているのでは、と感じていたからです。

言葉の誤用か、時代と共に意味合いが移り変わっているのか、いつも切り分けができずモヤモヤしていました。もし意味が変化していくことを否定するなら、古典で扱う言葉なんて全部誤用じゃないか。学生時代に国語が嫌いだったのは、こういう気持ちが根底にあったからだと思います。

誤用への指摘に反発心を抱く一方で、誤った文章を書くことを恐れている自分もいます。仕事のメールを打つ時は、変な言葉づかいになっていないだろうか、上司に対して失礼はないだろうかと、細かな表現を気にしてしまい、筆が進まないことがよくあります。

日本語の疑問を根拠を示し解説してくれる

話題は変わりますが、「今年の新語2020」で「ぴえん」が大賞に選出されていました。この選評が面白く、国語辞典編纂者である飯間浩明さんを知るきっかけとなりました。若者言葉を言語体系の観点から、論理的に解説されているのが面白かったです。

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その飯間さんが本を出されたことをツイッターで知り「日本語はこわくない」を読んでみました。上司に「お疲れさまです」は失礼?自分から連絡するのに「ご連絡」はおかしい?…など。まさに先ほど述べたような、自分が日頃から悩んでいた疑問に答えてくれる本でした。

疑問に対して根拠を示したうえで論理的に解説してくれます。それでいて、まったく押しつけがましさを感じさせない素晴らしい解説ばかりです。

自分の思いを表せる言葉こそ正しい

この本の最後では、正しい日本語は誰が決めるのかについて述べられています。正しい言葉は誰かが決めているものではなく、自分の思いや考えを伝えられる言葉こそ正しいと。国語辞典の先生から、こう言っていただけて気持ちが楽になり、文を書くハードルが少し下がった気がします。

国語辞典に書いてある日本語こそ正しいと思い込んでいました。でも実は逆で、世の中で使われている言葉の意味が辞典に書かれているのではないか。そんな風に考え方が変わりました。

とても読みやすい本なので、1日あれば読めるのではないかと思います。日本語で悩んでいる人はぜひ読んでみてください。